vol.012 Creative connectivity | 変化し続ける協働体/活動体

MUFF20周年の節目に、改めて今MuFFが興味を持っているテーマについて話をしてもらおう!という企画の第一弾。モデレーターを務めてくれたAKINDの岩野氏のNOTE記事に会の振り返りと考察が記されていますので紹介させていただきます。

Special thanks !


制度や経済の枠組みでは捉えきれない「活動体」のあり方を問う第2回《ROUND TABLE》。テーマは「CREATIVE CONNECTIVITY(変化し続ける共同体/活動体)」。

登壇者:建築家の今津修平さん(MuFF)、北川浩明さん(文化工学研究所)、クリエイティブディレクターの濱部玲美さん(KUUMA)、そして社会学者の松村淳さん(神戸学院大学)

組織ではなく“共同体/活動体”として、必要に応じて立ち上がり、役割を変え、やがて自然に解消していく。 そんな“非制度的・非経済的”な集まりのあり方が、都市における文化的生態系を豊かにしていることが共有されました。


都市は、創造的な“ぶつかり”によって進化する

“Creative Connectivity”というキーワードは、『グリーンネイバーフッド』の著者であり、雑誌『MEZZANINE』編集長でもある吹田良平さんからの示唆に基づいています。

異なる専門性や感性をもつ人々が都市に集まり、ぶつかり合い、交錯することでコラボレーションが誘発され、新たな価値が生まれる。これからの都市には、そうした創造的な接続を促す「場」や「関係性」が不可欠である——という考え方です。

今回登壇した北川さんと濱部さんは、共創的なユニット「COCCA」を今津さんと共に立ち上げたメンバー。そして松村さんは、そのCOCCAに学生を連れて訪れ、外から実践を見つめてきた立場です。

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MuFF 今津修平さん

COCCAは単なるユニットではなく、異業種・多世代の人々が出会い、プロジェクトごとにチームを編成しながら共創していく“プラットフォーム”でした。2018年には神戸・二宮に拠点を構え(現在のNiDoNe)、老若男女が集い、目に見えない価値や思いを丁寧に共有する日々が続いていました。

「外注でも組織でもない。雑談から始まり、次世代へと価値や場所を手渡す。それが、プラットフォームとしてのCOCCAだった。」

COCCAが体現していたのは、“Creative Connectivity”の可能性でした。

街場のクリエイターという存在

“Creative Connectivity”を語る上で土台となったのが、松村さんの著書『建築家の解体』で提示された「街場の建築家」という概念です。

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バブル崩壊後、建築物を「建てる」行為そのものがネガティブに語られるようになり、現在、日本には800万戸を超える空き家が存在するといわれています。そんな時代に必要とされているのは、空き家の活用や地域の再生について相談できる、日常に寄り添う「街場の建築家」だと松村さんは指摘します。

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右:神戸学院大学 松村 淳さん

重要なのは「建てること」よりも「関わること」、「制度に従うこと」よりも「生活に寄り添うこと」。つまり、建築家を制度内の設計者としてではなく、都市の文化や関係性を媒介する“文化的アクター”として再定義する必要があるのです。この視点をさらに広げ、今回の対話では「街場の建築家」を「街場のクリエイター」として再構築しました。

また松村さんは、「専門性」だけでは信頼を得にくい時代において、クリエイターがいかにパーソナリティを表出し、地域との関係性を築いていけるかが問われていると語ります。

都市には、「仕事でまちをつくる人」と「暮らしでまちをつくる人」がいます。システムにおける設計などの経済活動で動かす“つくる力”と、生活世界で人と人の関係性を紡ぐ“くらす力”。この両者が交差する“余白”にこそ、都市の変化が宿るのです。

近年、地方へ移住するクリエイターも増えていますが、多くは首都圏の仕事で収入を得ながら、地方では単に暮らしているだけというケースも見られます。つまり、経済活動としてシステムに参加しつつ、地域の生活世界には“フリーライド”している構図です。

本当にそれでよいのか。クリエイターの存在意義を再考すべき時期に来ているのかもしれません。だからこそ、街場のクリエイターは、「仕事と暮らし」のあいだにある関係性を自ら編み直していく存在として、今後ますます重要になると感じます。

クリエイターが創造する“共同体的”コモンズ

松村さんの近著『愛されるコモンズをつくる』では、行政による形式的な公共空間ではなく、私的空間を共的に“コモンズ化”していく実践が紹介されています。

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「排除か包摂か」という二項対立ではなく、顔が見える関係性のなかで“色”を出しあう共創的なコモンズこそ、これからの都市に必要である。COCCAはその原型として、「共同体」と「活動体」の二層構造を持ち合わせていました。

北川さんはこう語ります。「全員が納得するまで話し合う。時間がかかっても構わない。ディレクションと対話を往復しながら、旗を立てる人と“共犯関係”を築いていく。」“答え”を急がず、“評価軸”を共有することに価値を見出す。共同体は合意を、活動体はプロセスを大切にする。だからこそ、「誰が言ったか」ではなく「何をどうするか」という述語的な対話にフォーカスすることで、関係性のフラットさが保たれるのです。

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文化工学研究所 北川浩明さん

北川さんは、COCCAでの実践をもとに、AIによるファシリテーションを取り入れた合意形成プラットフォーム「CULTIVATE[]」の開発も進めています。

会場からは「ワントップのディレクターが決定するのではない、フラットな合意形成は本当に可能なのか?」という問いも投げかけられました。これに対して濱部さんは、メンバー一人ひとりが自律的に思考し、創造できる“余白”をつくるディレクションが大切だと応じました。

クリエイターが創造する“活動体的”コモンズ

「雑談ができるようになったのが、一番大きかった。」濱部さんは、COCCAの魅力をそう振り返ります。

COCCA BARやCOCCA STUDYといった活動では、子育て世代を中心に、子どもから高齢者、学生から外国人まで、多様な人々が混ざり合い、制度や経済に縛られない「余白」の中で自然な関係性が育まれていました。

新たに兵庫区でオープンした濱部さんのスペース〈migiwa〉は、Laboratory(実験)、Gallery(展示)、Kitchen(食)、Office(事務)といった複数の機能が交差する、まちに開かれた場です。

朝、工場のシャッターが開き、街の顔が見える時間帯に人が自然と集まる。90歳の職人がランチを食べに来たことをきっかけにワークショップが生まれる。地域の人との物々交換が始まり、自治会長と挨拶を交わす——。

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左:KUUMA 濱部玲美さん  

こうした積み重ねが、経済だけに依存しない「信頼」として根付いていきます。コモンズには、「汗をかいて育てる人」や「肌で感じたことをアウトプットする人」がいる。そこに生まれるのは、評価される成果ではなく、“感じ取られる空気”なのかもしれない。

非制度・非経済的な活動体は、「何かをするための場所」ではなく、「そこにいていい」と思える空気を醸成する場であり続けているのです。

おわりに|共にあることのデザイン

第1回「Urban Democracy」では、インフォーマル(非制度的・非経済的)な実践を受け止める「場」の重要性が語られました。

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会場の様子

そして今回のROUND TABLEでは、「共創的な合意形成」への挑戦と、「仕事の外にある関係性」をどう育てていくかという問いが浮かび上がってきました。

  • それぞれの旗を、お互いに立てること
  • 全員が納得するまで、話し合うこと
  • 仕事だけでなく、暮らしでもつながること

“Creative Connectivity”とは、都市という複雑で開かれた場において、
「共につくり、共にくらす」ことを探り続ける協働体/活動体のことだと実感させられました。

「答えを急がない。対話を焦らない。関係に期待する。」

都市に生きる一人として、そんな態度を大切にしていきたい——そう思わせてくれる時間でした。


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AKIND 岩野 翼

岩野 翼 | Tasuku Iwano
株式会社AKIND 代表取締役 CEO|神戸在住|二児の父

英国ブルネル大学(Brunel University London)にてブランディング&デザイン戦略の修士課程を修了。2014年、地元・神戸にて「百年続く、三方よしの商いを共につくる」ことを掲げ、株式会社AKINDを創業。

企業や地域の“内側”から前向きな変化を育むブランディングファームとして、対話型組織開発やデザイン思考を組み合わせたブランドマネジメントを実践。経営理念の再定義から商品開発・コミュニケーションまで、一貫したブランド戦略づくりを支援している。

これまでの主なプロジェクトに、Peach Aviationのブランドマネジメント、ANAグループのビジョン策定、経済産業省のMVV策定、「食都神戸」や神戸ウォーターフロントの都市ブランディング、道の駅FARM CIRCUSのブランド開発などがある。