MUFF20周年の節目に、改めて今MuFFが興味を持っているテーマについて話をしてもらおう!という企画の第一弾。モデレーターを務めてくれたAKINDの岩野氏のNOTE記事に会の振り返りと考察が記されていますので紹介させていただきます。
Special thanks !
AKINDの創業時からのパートナーであるMuFFが創業20周年を迎えました。周年記念として、今津さんが定期的に行なっている座談会イベント《ROUND TABLE》を3回連続で開催し、岩野がモデレーターを担当させていただきました。3回とも共に面白い内容であったため、記事にまとめたいと思います。
都市開発やまちづくりの多くが制度や経済の論理で動くなかで、日々の暮らしの中にある“都市の民主性”とは何かを問う第1回のテーマは“Urban Democracy”。都市を制度ではなく“生活世界”から捉え直す視点が交わされました。
登壇者:都市デザイナーの杉田真理子さん(一般社団法人for Cities)、都市計画研究者の吉野和泰さん(鳥取大学助教)、建築家の今津修平さん(株式会社MuFF)
座談会では、「制度に依存せず、個人の選択と行動が都市を変える可能性」「市民の当事者性を育む場づくり」という視点が投げかけられ、まちづくりの合意形成のプロセスに誰が参加できるかという問題であり、都市は“つくるもの”であると同時に“暮らすもの”であるという再認識がなされました。
都市を想像する力は、どうすれば高められるのか?
都市という言葉から、何を思い浮かべるでしょうか? ビル群、交通網、経済活動…。けれど、for Cities代表の杉田さんは、「感覚から都市を捉え、場を編集し、使いこなす」という“Sensory Urbanism”の視点を提案します。街を再発見するには、五感をひらき、既成概念から自由になることが大切だと語ります。

彼女は「種を植えて放置する」ような、コントロールしすぎない場づくりや、認識のバイアスを外す仕掛けをデザインし、都市を新しいレンズで見直すプログラムを世界各地で展開しています。注目するのは、移民を含む多様な人びとや動植物が共存するインフォーマルなエリア。都市を「誰と、何と共に生きるか」という問い直しの場として捉えています。
杉田さんの投げかけは、“Urban Democracy”とは、都市に対する私たちの解像度を上げる想像力のことである、と気づかせてくれました。
都市に参加するとは、どんな行為なのか?
Democracyとは、dēmos(民衆)+kratia(力)の造語です。都市計画を専門とする吉野さんは、この語源を手がかりに「日常にひそむ都市の政治性」に目を向けます。「都市は、話すこと、遊ぶこと、学ぶことのなかにある。行政がつくるものではなく、市民が編み直していくものだ」と語り、住民投票によるまちづくり、50年続く都市ガイドツアー、市民勉強会などの事例を紹介してくれました。

また、そうした市民参加を支える土台として、行政が街全体の情報を可視化・共有できるデータベースを運営している点も印象的でした。プロセスや成果が共有されることで、市民は批評的に都市を語り、空間の転換をきっかけに地域のアイデンティティを育むことができるのです。
「都市に参加する」とは、批評し、語り合い、関わりながら考えること。それは、制度としての政治ではなく、日常の中にある小さな実践の連なりから始まる——。そう気づかされました。
安心して関係を編み直せる「場」は、どう生まれるのか?
今津さんが手がけるNiDoNeは、都市における分断された働くこと、暮らすこと、遊ぶこと、学ぶこと、をつなぎ直す実験的プロジェクトです。オフィスビルの1階をまちに開き、関わる人たちのリビングのような「巣」として再設計。非経済的な営みから生まれる縁を大切にしながら、座談会イベントのROUND TABLEを定期的に開催しています。

一方、杉田さんは世界中を飛び回る多拠点生活者でありながら、京都に「Bridge Studio」という拠点を開きました。建築やアート、まちづくりに関わる実践者がDIYでリノベーションを行い、アーティスト・イン・レジデンスとして人々が集う場所へ。都市における「家開き」の実践が、より多くの関わりを生んでいます。
このBridge Studioを起点に、大阪大学文化人類学研究室と共に始まったのが「都市エコロジー観測所(Observatory for Urban Ecologies)」。ここでは、人と自然の関係性を再編成するためのリサーチと実践が行われています。
都市のなかで“巣”のような居場所を複数持つこと。Informal(非制度的)な空間や、プライベートとパブリックの交差点には、関係性を育てる余白があり、「都市のやわらかさ」を取り戻す鍵があるのかもしれません。
都市と自然の関係を、どう編み直すことができるのか?
for Citiesのプロジェクト「都市エコロジー観測所」では、More Than Human Perspectiveという視点から、都市の観察・記録・提案が行われています。杉田さんは、都市に関わるとは自然や物質、動植物との循環に関わることでもあると語ります。「Animal Scale City」や「Meadow Scape」など、人間以外のスケールを取り入れた空間設計、素材の循環を前提とした「Everyday Material」の活用も紹介されました。

吉野さんからは、ヨーロッパの都市空間におけるグリーンの役割が共有されました。パリでは、使われなくなった高架を線状の公園として再利用することで、街を緑でつなぎます。特に印象的だったのが、パリの緑化バス停。屋根には植物と巣箱、壁面には緑。屋根は行政、壁は商店街が管理するなど、複数の担い手で有機的に維持する座組みができていました。メンテナンス運用を前提とせず、自然のまま育てることを受け入れる。そんな街の風景を生み出すためには、施工時の植栽設計が重要。そして、そもそもの“自然に対する姿勢”が問われます。
神戸でも「Living Nature Kobe」や「Green Commons」といった取り組みが進行中です。公共植栽のボランティアによる維持活動には、年々参加者が増えているとのこと。
都市におけるグリーンは、単なる装飾ではなく、関わりしろのデザイン。それをどう“かっこよく”伝え、次世代に教育できるかが問われているのではないでしょうか。
都市は、遊びからつくられる
今回のROUND TABLEでは、マクロにまちづくりの政治を考察する吉野さんと、ミクロに都市との関わりを再デザインする杉田さんの思考と実践が交差しました。

“Urban Democracy”を考える上で、都市に対する想像力を多元的に高めること、だれ/何と共存するという選択を重ねること、日常の政治を通じて都市との関係性を編み直すことの重要性を学びました。特に「私たちはどう生きるか」という点において、印象に残ったのは2つの視点です。
- インフォーマル(非制度的・非経済的)な実践を受けとめる「場」の重要性
- 自然との関わりが、市民のまちづくり参加の起点になりうること
この2つのテーマを軸に、残り2回のROUND TABLEのレポートも引き続きお届けしていきます。

岩野 翼 | Tasuku Iwano
株式会社AKIND 代表取締役 CEO|神戸在住|二児の父
英国ブルネル大学(Brunel University London)にてブランディング&デザイン戦略の修士課程を修了。2014年、地元・神戸にて「百年続く、三方よしの商いを共につくる」ことを掲げ、株式会社AKINDを創業。
企業や地域の“内側”から前向きな変化を育むブランディングファームとして、対話型組織開発やデザイン思考を組み合わせたブランドマネジメントを実践。経営理念の再定義から商品開発・コミュニケーションまで、一貫したブランド戦略づくりを支援している。
これまでの主なプロジェクトに、Peach Aviationのブランドマネジメント、ANAグループのビジョン策定、経済産業省のMVV策定、「食都神戸」や神戸ウォーターフロントの都市ブランディング、道の駅FARM CIRCUSのブランド開発などがある。
