次世代へつなぐ施設づくり

pucapuca comune / Tanbasasayama

pucapuca comune / Tanbasasayama

丹波篠山で運営していた天然温泉施設を、2022年4月「湯あみ里山公園 pucapuca commune(ぷかぷかコミューン)」へリニューアル。1階には産直所やベーカリーカフェなど地元の産物に触れられるお店が入り、2階のデッキからは豊かな自然を見渡すことができるようになった。
代表の大谷さんが幼い頃から見てきた丹波篠山の景色に対して感じていることや、どのような思いでリニューアルを通じて次世代へつなげていこうとしているのかお話を聞いた。

地元の良さを知ってもらえる施設に

大谷さんの曽祖父が江戸時代から続く村営温泉に湯治目的で訪れ、村の人とコミュニケーションをとりながら通い続けるうちに温泉を引き継ぐまでに。その後継続して4代目として温泉施設を託されてからは、より温泉を楽しめるようにと2019年7月に目の前でキャンプ場を始めた。
さらに、キャンプとともに丹波篠山を味わえるような村の活動ができないかと考え、温泉施設の老朽化もあり里山公園へのリニューアルに動き出すことになった。

いろんな人が関わることで環境も変えていきたい

幼い頃からよく訪れていた場所だったが、数年前に近くの川が汚れていたことに気付き危機感を感じた。崖だった場所を開発で埋め立てた場所もあり山の地形に戻していけるようにも考えているそう。
「もうちょっと里山の環境自体を元気にして、子供たちの未来に還元できるような場所にしたいなと思っています。最近川を見ると少しずつ綺麗になっているんですよ。やっぱり人が入って川底を踏む機会が増えるだけでも苔が落ちたりして変わってくる。みんなが遊べば遊ぶほど山を守ることにもなるんですよね」と語る。

ランドスケープと調和する建築

山と一体になるような建築物を目指していて、木造で耐力壁がない円形の構造というのが珍しく開放感は十分。土を敷いた大きな屋根もポイントになっている。屋根は、あえて土だけを敷いていて周りの植物から種が飛んできて育つような自然形態を活かしたいと考えた。
他にこだわったのは、五感で感じる空間にしたいということと、遊びを発見する場でありたいということ。2階にいると風が抜ける音や感覚を肌で感じとることができ、あえて遊具を置いていないので子供たちは四季によって違う里山の植物などで遊ぶことに夢中になるそうだ。

森が育っていくまで

オープンから1年が経って周りのビオトープにも進化がみられた。「最初は土しかなかったんですけど、ちょっと田んぼの土を入れたり周りの自然から取ってきたもので稲科の植物が水辺に入るようになってきて。まだまだ完成には程遠いですが少しずつ良くなってきています。5年とか10年とかをかけて森に還していくようなイメージを持っています」
大谷さんのお話には、この場所へやってきた方にどう楽しんでもらうかという思いが根っこにあり、植物のことになるといっそう活き活きしていた姿が印象に残った。
今後もこの場所をベースに、一つずつ新しいことを生み出していきたいと計画を練っているところだそうだ。

文:寺田 愛