施設コンセプト「PLAY 1OOORE SCENES」の3つのO「Open・Ordinary・Organic」から想起した「余白」「共創」「不変」「自由」という4つのワードを、施設デザインや施設整備後の場の在り方において重要な価値であると考え計画を進めました。

それらの価値を、施設の運営者やグラフィックデザイナー等のステークホルダー各々で捉え直すことで、価値の表現が多様化すると考えました。また、それらの表現をあえて統合せずに共存させることで、多様なシーンを生む千里中央公園独自の表現になるのではないかと考えました。
旧公園管理事務所を視察した際、雑木や雑草に覆われ暗く湿った外部空間や、老朽化した建物を目にしました。ただ、そこにある50年以上の歳月を経て育成してきた木々や、窓から見える公園の風景など、この場にしかない価値を生み出せる素地がすでにあることも発見しました。我々は、それらの既存の魅力と新たな設えを有機的に整備し価値を最大化すべくデザインに取り組みました。

外部空間は豊中市の方々や造園設計者とも協議を重ね、より周辺地域の植生に近く風通しのいい雑木林を既存利用しながら実現しました。その中にあるデッキ空間は小さくも豊かな森林への没入感を創出し、独自の食空間の体験価値を創出しました。また、外壁は森林風景のなかに溶け込んでいけるようにエイジング塗装を施しています。カフェの西側は既存外壁を撤去し室内外をつなぐ大型開口部を新設しました。その開口部に面して、木々が風に揺れる様子や木漏れ日が差し込む客席エリアを配置しています。オープンキッチンは一枚板の杉材カウンター、銅色のフードや炭入りモルタルの仕上などを採用しています。
ローソンは、大型のミラーで公園の風景を映しこみ、公園内にある青空コンビニのような体験を生んでいます。
ラボは地域の方々と“共につくる場”として運営するため、多様なシーンに対応できる可変的な家具で構成しでいます。また、外装はアーティストの中島麦さんや地域の方々と共に、公園内にある色を探し見つけた色で外壁面に塗装するワークショップを通して共創しました。

何十年もの間、ここに在り続けた場を大切にし、千里の人々の活動の軌跡が残り、人々の記憶に残る場へ。公園や地域と共に成長する場となることが重要だと考え、デザインを行いました。

文:

株式会社乃村工藝社 デザイナー 出口 智彦
株式会社MuFF 今津 修平

所在地 :千里中央公園
用途  :公園施設
延床面積:291.60㎡+38.47 ㎡
企画運営:千里中央パートナーズ( エイチ・ツー・オーリテイリング ローソン 西日本電信電話)
建築設計:MuFF 今津修平 川上真誠 乃村工藝社 丹田 勝巳
内装設計:乃村工藝社 出口智彦 稲手広子 須賀成人
施工  :乃村工藝社
構造協力:清水良太構造デザインスタジオ
サインデザイン:NATSUKI HOSOKAWA DESIGN
グラフィックデザイン:KANZAKI NATSUKO
ランドスケープ:五嶋造園
アート:中島麦
竣工  :2023年3月
写真  :Harry、今津修平
受賞  :2023年 都市公園等コンクール/審査員特別賞
みどりのまちづくり賞/花博協会長賞
ディスプレイ産業賞/奨励賞
日本サインデザイン賞/地区デザイン賞
日本空間デザイン賞/入選