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所在地 :鹿児島県熊毛郡
用途  :専用住宅
延床面積:202.73㎡
設計  :今津修平+長谷川哲也
施工  :ヒラウチ建設
竣工  :2015年5月
写真  :今津修平


interview
2023年6月

豊かな緑に囲まれその先に美しい海が見えるヨガスタジオを備えたホテルと自宅。東京と2拠点で生活し、今年はほとんど屋久島にいる生活を送られているという国本さん。自然と共生する屋久島という土地でどのように設計が進んだのか、また現在の暮らしについても伺わせてもらった。

移住と新たな場所づくり
神々しい山と森に魅了されて屋久島への移住を決めた。島外から出入りするエリアは北側だが、南側は比較的雨が少なくて暖かく雰囲気も良い。移住者は南部を好む人が多いそう。
海から突然山が生えているようなイメージという独特の表現を使い、海でできた水蒸気が山に当たって雲となりたくさんの雨が降る、特異な地形による水の循環を説明してくれた。「5キロ先の友達と電話で話しているとこっちはカンカン照りでむこうは土砂降りということがあったり、漫画みたいにここから先は突然雨、そういうことも体験します」大雨の影響を考えながらも、ひらけた空気感が漂う土地を見て、場所はあまり悩むことなく決断した。

価値観の共有、話はそこから
「当時住んでいた東京の家にも来てもらって普段聞いている音楽や食べているものについて話をした。具体的にどういう建物っていう話よりも前に、自分たちの暮らしぶりを先に共有しておきたいなと思ってそういう進め方にしました」感覚的に話しながら読み解いてくれる人が良いと考えていたと国本さん。「候補はたくさんいたけど、今津さんにお願いしたいと感じました」と続けた。日常の様子から軸になる内容を相談し、空間に落とし込んでいくことが始まった。

郷に入れば
島の環境を熟知する大工さんから連絡があり、2本の予定だった梁は3本に増やした。近年大きな台風が来るたびに事前に相談できて良かったと感じているそう。
「雨漏りなど何かあった時に駆けつけてくれる工務店さんたちとの関係を悪化させないように、施主として少し言いにくいことは設計サイドから意見を言ってくれたのは助かった」と話す。人と自然との関わりを尊重し、その土地の文化にしなやかに適応することも大切なようだ。

リクガメのお家
つい先月、隣の空いていた土地を購入した。1m程の大きさになるケヅメリクガメに長年思いを馳せていたが、屋久島であればと去年飼い始めた。新しい土地はなんとリクガメ用の家を作るためだった。草食で泳げないリクガメでとてもかわいらしいのだとか。これからの一層健やかな生活が垣間見られる。

「ヨガスタジオや客室に案内した時に、うわぁと感嘆の声が聞けるのが嬉しい。約4mの天井高の空間で視線の先には海。客室は北欧のビンテージ家具など自分が好きなものを集め、リネン関係の心地良さなど細かいところまで気を配っているつもり。ふと客室に入った時、ここに泊まったら最高やなぁと自分でも思えますよ」
島での生活を切り拓いていく国本さんのそんな話を聞いて、雨が降っても降らなくても、屋久島の空気をまといに行きたくなった。

文:寺田 愛