所在地 :神戸市中央区
用途  :飲食店
延床面積:54.61㎡
設計  :今津修平+秋松麻保+矢野直子/MuFF+融点
デザイン:秋松太一/融点
植物  :yurun
施工  :leaf
竣工  :2022年5月
写真  :Harry


interview
2023年9月

神戸の裏三宮エリアで「焼鳥 米澤」、「Za’snatch」、「神戸肉料理 すぎたに」という3店舗を経営する江さん。元々運営していた店舗を閉め、ほぼ同時に専門性の高い飲食店を新業態で3店オープンするという珍しいご依頼から始まった。再オープンの際に重要視していた店舗設計に期待する役割などについて伺った。

それぞれのお店のコンセプト
コースで楽しむ焼鳥料理店、ピッツェリア、神戸牛を使った肉割烹と、表現は異なるが共通点もある。「どのお店も非日常感を味わえるようにしたいと思っていました。お店に入った瞬間に五感を使うスイッチが入るような体験がすごく大事だと考えています」と江さん。体験というワードには店舗立地も深く関係しているという。

外部環境から一変させる空気感
3店とも三宮駅のほんの北側に位置する二宮というエリアに店を構えている。昭和の雰囲気と裏路地感が漂い「裏三宮」とも呼ばれているが、二宮地域を盛り上げようと新たなエリア名を付けたのはまさに江さんたちだった。「裏の時間が流れる下町にポツンとある隠れ家みたいなところなので、お店に着くまでの空気も含めて楽しんでほしいと思っています」と語る。
下町を歩き、お店に入ると洗練された空間が広がっているコントラスト。どちらも引き立たせるためには空間づくりが大きなポイントとなり、優先順位を上げたいと考えていた。

リニューアルを振り返って
「今回このリニューアルというチャンスで依頼できて、どのお店のデザインも本当に気に入っています。各店舗では、営業前の時間帯にカウンターに座って店内を眺めたり、営業時間中にもふと良い場所だなぁと感じては惚れ惚れしています」と、にこやかに話してくれた。
完成した店舗もさることながら、プロジェクトの進め方も息が合っていたという。「僕がやってみたいこととか要望に対して、皆さんで考えて頂き、どうしてもできないことははっきりと伝えてくれました。課題をクリアに捉えて感情的な判断が入っていないこともやりやすかったですね。その環境の中で、お互いのスタッフが現場と共に成長したと感じています」と締めくくった。

MuFFのオフィスも同じ二宮エリアにあり、ジャンルを超えて信頼し合える人が近くにいることが頼もしく、エリアの魅力のひとつが滲み出ているように感じた。新たな発信地としてどのような街に進化していくのか、目が離せない。

文:寺田愛